怖い話

長寿の祝福

細い路地、見知らぬ町。その先に広がるのは、古びた門と、その向こうにぽつんと立つ懐かしい風情の日本家屋だった。雨が降りしきる中、美鈴(ミスズ)は濡れた毛布を身にまとい、ぼんやりと見つめていた。何か惹かれるものがあった。それは、この家が美鈴の中に眠っていた、ずっと前の記憶とつながっているようだった。

彼女の前に立つ老婆は、ずぶ濡れの美鈴を不憫そうに見つめ、「こっちへおいで」と優しく招いた。

「神様に感謝しなさい。長寿の祝福を授かったから、あなたはここに辿りついたのよ。」

老婆の言葉に、美鈴は警戒しながらも、彼女の優しさに心を開いた。

日本家屋は、その見た目に反して暖かく、美鈴はすぐに居心地の良さを感じた。そこには老婆だけではなく、一緒に住む家族がいて、皆、何一つ欠けることのないほど長生きをしていた。家族たちは、美鈴に「長寿の祝福」について語った。

「それは神様からの特別な恩恵よ。一度それを受ければ、あなたも私たちと同じく、永遠にこの世に生き続けられるわ。」

美鈴の心に浮かんだのは、人生の喜び、苦しみ、そして別れの悲しみ。彼女は、そんなものを永遠に味わうことを果たして望むのだろうか。そして、永遠に生き続けるということが本当に祝福なのだろうか。

しかし、その家族の笑顔を見て、美鈴は疑問を捨て、老婆の提案を受け入れることにした。

時が経つにつれ、美鈴は彼らの一員となり、幸せな日々を過ごした。しかし、ある夜、彼女は悪夢にうなされ、目が覚めた。

彼女の前に現れたのは、長寿の家族たち。しかし、

彼らの姿は異常だった。彼らの肌は腐り、目は血走り、破烂した衣服からは白骨が覗いていた。彼らは美鈴に向かって笑った。

「祝福を受けたら、あなたも私たちと同じになれるわ。」

美鈴は叫んだ。恐怖で体が凍りついて、彼女は逃げ出すことができなかった。そして、その瞬間、彼女は知った。

長寿の祝福とは、生命を永遠に続けることではなく、恐怖と苦痛を永遠に経験することだと。

美鈴の叫びは、古びた日本家屋を揺るがせ、家族たちの笑い声と共に、闇の中に吸い込まれていった。彼女の命は、長寿の祝福と共に、闇の中に永遠に閉じ込められたのだった。

老婆の声が遠くから響いた。「神様に感謝しなさい。長寿の祝福を授かったから、あなたはここに辿りついたのよ。」

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