PSYREN -サイレン-は、岩代俊明が『週刊少年ジャンプ』で2008年から2010年まで連載した漫画で、2026年10月からTVアニメが放送されている作品です。公衆電話から鳴るベル、赤いテレホンカード、そして「秘密結社サイレン」という都市伝説。消えた幼なじみを追った高校生・夜科アゲハが放り込まれたのは、怪物が徘徊する荒れ果てた大地でした。そこは異世界ではなく、10年後の日本だったのです。未来を見た少年たちが、現代と未来を行き来しながら世界の崩壊を食い止めようとする物語は、全16巻・全145話で完結しています。この記事では、第1話(CALL.1)から最終話のLAST CALL「繋がる世界」まで、原作漫画の物語を順番に解説します。

ネタバレ警告:この記事は原作漫画の最終話までの重大なネタバレを含みます。W.I.S.Eの首領と真の黒幕の正体、主要人物の死亡、最終回の結末、さらに後日談の小説の内容まで書いています。アニメで初めて作品に触れる方はご注意ください。

この記事の基準:原作漫画(全16巻・全145話)の内容を扱います。巻ごとのあらすじと収録話は集英社の単行本紹介文と目次で確認しました。どの出来事が何巻にあたるか、ゲームの参加者や未来の年表などの細部は、日本語版Wikipedia、ファンWiki(PSYREN -サイレン-@wiki・英語版PSYREN Wiki)、英語版Wikipediaを照らし合わせて整理しています。集英社は話ごとのあらすじを公表していないため、出来事と巻の対応はおおよその目安です。10年後の後日談は漫画ではなく小説版の内容です。いずれも2026年10月15日に確認した情報です。

作品の基本情報(原作漫画とTVアニメ)

項目内容
原作岩代俊明(前作は『みえるひと』)。タイトルロゴと作中の赤いテレホンカードの表記は、Rが左右反転した「PSYЯEN」
連載『週刊少年ジャンプ』2008年1号〜2010年52号。話数の単位は「CALL.」で、最終話は第145話のLAST CALL「繋がる世界」
単行本ジャンプ・コミックス全16巻。最終16巻「繋がる世界」は2011年3月4日発売
小説版SOWによるノベライズ『another call』全2巻(JUMP j BOOKS)。2巻「未来は君の手の中に」は、アゲハが赤いテレホンカードを手にしてから10年後を描く後日談で、2026年10月5日に電子新装版が出た
TVアニメ2026年10月5日(月)から放送。TOKYO MX・BS11は毎週月曜23時、サンテレビは毎週月曜24時、三重テレビは10月7日(水)から毎週水曜24時20分。配信は10月5日23時30分から各サービスで順次(TVアニメ公式サイト)。アニメーション制作 サテライト、監督 小野勝巳、シリーズ構成 吉田伸、キャラクターデザイン 大熊白、音楽 大間々昂・斎木達彦・兼松衆。アニメでは登場人物がスマートフォンを使っている(日本語版Wikipedia、放送後の視聴者の感想)
主題歌OP CLAN QUEEN「WARNING!!」、ED Who-ya Extended「ICARUS」
主なキャスト夜科アゲハ:安田陸矢/雨宮桜子:風間万裕子/朝河飛龍:武内駿輔/望月朧:斉藤壮馬/霧崎兜:野津山幸宏/八雲祭:甲斐田裕子/ドルキ:檜山修之(TVアニメ公式サイト)

「サイレン」とは何か|ゲームのルール

物語の舞台となる2008年の日本では、接点のない人々が次々と姿を消す連続失踪事件、通称「神隠し」が起きています。その黒幕は「秘密結社サイレン」で、使者の怪人ネメシスQが赤いテレホンカードを持つ者を「楽園」へ導く、という都市伝説が広まっていました。大富豪の霊能力者・天樹院エルモアがサイレンの真実に5億円の懸賞金をかけたことで、謎解きは一大ブームになっています。

実態は、赤いテレホンカードを手にした者が、荒廃した未来の日本と現代とを行き来させられるゲームです。カードを公衆電話に入れると「サイレン入国管理センター」につながり、イエスかノーで答えるアンケートを受けます。審査を通った者はサイレンドリフト(放浪者)となり、以後は不定期に鳴るベルで呼び出されます。ベルは受話器を取るまで大きくなり続け、最後は脳が潰れるほどの音量になるため、参加を拒むことはできません。

  • 未来へ飛ばされた参加者は、スタート地点の公衆電話で確認できるゴールの公衆電話を目指し、そこに自分のカードを入れると現代へ戻れる
  • 次のゲームのスタート地点は、前回のゴールから数キロ以内の東にある公衆電話。参加者はゲームのたびに未来の日本を東へ進む
  • 帰還のたびにカードの度数が減り、最初の50度数を0にすればクリアとなって、以後は参加する資格を失う
  • サイレンのことを他人に漏らそうとすると、ネメシスQの「制裁」で灰にされる

未来の世界は「禁人種(タヴー)」と呼ばれる怪物がうろつく荒野で、空は膜のようなもので覆われています。大気にはPSI(サイ)の力が満ちていて、これを吸い込んだ者は超能力に目覚めます。PSIは物理的な力を放つ「バースト」、精神に働きかける「トランス」、身体能力を高める「ライズ」の3種類が基本です。

物語の全体像|5回のゲームと現代パート

物語は、未来でのゲーム(全5回)と、現代での調査や戦いが交互に進む構成です。未来で見た「崩壊の記録」をもとに現代で動くと、次に訪れる未来の姿が変わっていきます。全体の流れは図1のとおりです。

PSYREN 全16巻の流れを5回のゲームと現代パートに分けた図
図1:PSYRENの全体の流れ(集英社の単行本紹介文とファンWikiの整理から作成。巻の区切りは目安)

1回目のゲーム|赤いテレホンカード(1巻)

2008年6月、白瀧高校の夜科アゲハは、報酬1万円で揉め事を請け負う「何でも屋」のような高校生でした。ある夜、ひとりでに鳴る公衆電話の受話器を取ったアゲハは、「PSYЯEN」と書かれた赤いテレホンカードを手にします。翌日、幼なじみの雨宮桜子が同じカードを持っていることに気づきますが、雨宮は「助けて」と言い残して姿を消しました。

雨宮を捜すため、アゲハはカードを使ってアンケートに答えます。さらに、警察を名乗る2人組の男(碓氷と三宅)にカードを狙われながら、ついに呼び出しのベルが鳴りました。受話器を取ったアゲハが立っていたのは、廃墟が広がる荒野です。同じように集められた参加者たちは禁人種に襲われ、次々と命を落とします。アゲハは雨宮と再会して禁人種を倒し、生き残った朝河飛龍らとともにゴールの公衆電話から現代へ戻りました。

現代に戻ったアゲハは、やがて雨宮の口から、あの荒野は別の世界ではなく文明が崩壊した未来の日本だと明かされました。

PSIの目覚めと2回目のゲーム(2〜3巻)

帰還後、アゲハは謎の高熱と鼻血に襲われます。未来の大気に触れたことで、PSIの力が目覚め始めていたのです。アゲハはテレパシーで呼び出され、雨宮の師である世界的ピアニスト・八雲祭に出会います。祭はゲームをクリアした唯一の元サイレンドリフトで、PSIの基本とサイレンの恐ろしいルールを教えてくれました(集英社2巻紹介文)。

訓練が身につかないうちに2回目の招集がかかります。今回の参加者には、アゲハ・雨宮・飛龍に加え、アイドル俳優の望月朧と、軽いノリの青年・霧崎兜が加わりました。一行の前に現れたのは、巨大な「蟲」と、PSIの力を込めた銃を使う謎の男です(集英社3巻紹介文)。その正体は、飛龍が捜していた後輩の真名辰央でした。辰央は禁人種に改造されていたのです。

辰央との戦いで飛龍が重傷を負ったとき、アゲハの怒りとともに漆黒のバースト「暴王の月(メルゼズ・ドア)」が目覚めました。周囲のPSIに反応して、触れたものを消し去る危険な力です。制御できないまま放ったアゲハは脳に大きな負担を受けて死にかけますが、朧のPSI「キュア」に救われます。辰央は正気を取り戻したものの、カードを持たないため未来に残りました。

エルモア・ウッドと3回目のゲーム(4〜5巻)

実力不足を痛感したアゲハたちは、祭の知人でヤクザの雹堂影虎から、身体能力を高めるライズの特訓を受けます。並行して、アゲハは暴王の月を制御する訓練を始めました。一方、朧は天樹院エルモアに呼び出され、同行したアゲハと雨宮も、エルモアが伊豆の屋敷「エルモア・ウッド」で育てるPSIの子どもたち(カイル・フレデリカ・マリー・シャオ・ヴァン)と知り合います。子どもたちから「バースト・ストリーム」や「プログラム」の技術を学んだことで、アゲハはようやく暴王の月を扱う糸口をつかみました。

3回目のゲームの舞台は、中部地方の山奥です。アゲハたちはカブトの叔父でジャーナリストの霧崎塔二の山荘にたどり着き、世界崩壊の手がかりを見つけます(集英社5巻紹介文)。そこにあったのは、W.I.S.E(ワイズ)という集団の決起集会「宣戦の儀」を記録したDVDでした。映像には、2009年12月2日にW.I.S.Eへ立ち向かったエルモア・ウッドの子どもたちが、覆面の男に殺される場面が映っていました。

直後、W.I.S.Eの星将ドルキが部下とともに現れます。ドルキの口から、この世界が現代から10年後の2018年だと分かりました。アゲハは暴王の月を小さく鋭くした「暴王の流星(メルゼズ・ランス)」でカブトと連携してドルキを追い詰め、カブトは死の脅威が見える幻視の力に目覚めます。続いて星将シャイナも現れますが、一行は全員そろって現代へ戻りました。

犬居事件と「改変・12月2日」(6〜7巻)

子どもたちの死を防ごうとエルモアに未来を伝えかけたアゲハは、ネメシスQの制裁を受け、ネメシスQの空間へ飛ばされます(集英社6巻紹介文)。同じころ、影虎はPSIを使って闇金から金を盗む連続窃盗犯を追っていました。窃盗グループの犬居清忠らに影虎が捕らえられ、アゲハとエルモア・ウッドの子どもたちは山荘へ救出に向かいます。

アゲハが犬居を倒し、W.I.S.Eの情報を聞き出そうとしたそのとき、犬居の弟「三郎」を名乗っていた青年が正体を現しました。犬居の弟はとうに亡くなっており、青年は犬居を操っていたのです。青年は口封じのために犬居を殺し、アゲハたちに襲いかかります(集英社7巻紹介文)。この男こそ、W.I.S.Eの創始者天戯弥勒でした。アゲハは弥勒の攻撃からカイルをかばって負傷し、入院します。

7巻の巻題「改変・12月2日」が示すとおり、この事件のあと未来から持ち帰ったDVDの映像が変わりました。変化後の映像では弥勒は素顔で現れ、子どもたちを手にかけるのは主にジュナスになっていました(ファンWikiの一部はジュナスとドルキとしている)。ジャンプ本誌のあらすじ(ファンWikiの書き起こし)は、山荘でカイルたちが弥勒と出会ったことで未来が変わったと説明しています。英語版ファンWikiによると、作中では朧が、子どもたちが弥勒の能力をすでに見ていたため弥勒には殺されなくなったと推し量っています(日本語のファンWikiも同じ推測を書いています)。現代で動けば未来の記録が書き換わる。その事実が、ここで初めてはっきりします。

さらに映像からは、エルモアが2008年7月の旅客機事故で亡くなることも分かりました。アゲハたちは空港で搭乗を止めようとしますが、その最中に4回目の招集がかかってしまいます。

4回目のゲーム|変わった未来と夢喰島(7巻末〜10巻)

4回目のゲームの開始地点では、ドルキとシャイナが待ち伏せしていました。シャイナの瞬間移動で飛龍と朧は行方不明になり、カブトはドルキの爆撃からアゲハをかばって倒れます(集英社8巻紹介文)。絶体絶命のアゲハを救ったのは、10年分成長したエルモア・ウッドの子どもたちでした。カイルがドルキを倒し、ヴァンのキュアがアゲハの傷を治します。

実は、招集の直前にアゲハが取った行動によって、エルモアの事故死は回避されていました。エルモアが生き延びたことで子どもたちも宣戦の儀で死なずに済み、伊豆の病院の地下にエルモアが日本政府と造ったコロニー「天樹の根(ルート)」で暮らしていたのです。アゲハたちはここで、この時間の流れで2008年以降に起きたことを知ります。

ファンWikiの年表によると、この歴史ではW.I.S.Eの宣戦の儀が2009年12月10日に東京・代々木公園で行われ、その後大阪・仙台・名古屋などの都市が破壊されました。2010年1月5日、直径150キロの巨大隕石ウロボロスが突然軌道を変えて地球へ一直線に向かい、1月7日、人類文明最後の日「転生の日(リバースデイ)」が訪れます。ミサイルで隕石は破壊されたものの、中から現れた何かが地球を覆い、世界は崩壊しました。祭はW.I.S.Eの罠で重傷を負ったまま転生の日を迎え、目覚めたあと影虎とともに生存者の救助に出て、W.I.S.Eのグラナとシャイナに挑んで命を落としたとされます。2人を失ったイアンも、休まず負傷者の治療を続けて力尽きました。

やがてネメシスQが現れ、九州の夢喰島にいる「主」の救援をアゲハたちに求めます。島へ向かった一行の前に、主を狙う集団「ネオ天草」が立ちはだかりました(集英社9巻紹介文)。率いていたのは、かつてアゲハのカードを奪おうとした男・碓氷です。碓氷は未来を知りながらそれを変えようとせず、崩壊後の世界で楽に生きる道を選んでいました。アゲハは新技「暴王の月・円盤Ver.」を編み出して戦い、雨宮は碓氷の攻撃で記憶の一部を壊されます。

救出されたネメシスQの主は、自らの正体とゲームの本当の目的を明かしました(集英社10巻紹介文)。彼女は国の秘密研究機関「グリゴリ」の実験体07号で、天戯弥勒の双子の姉でした。ネメシスQは彼女のPSIが作り出した存在で、サイレンのゲームを始めたのは世界を救うためではなく、世界が壊れた原因を知りたいだけだと言うのです。身勝手な理由で多くの人を巻き込んだことに、アゲハは激しく怒ります。

07号の力で飛龍と朧の生存は確認できました。しかし飛龍は辰央とともに未来に残って戦うことを選び、朧は自ら禁人種の核を体に埋め込んだため交信できませんでした。現代へ戻れたのはアゲハ・雨宮・カブトの3人だけです。

考察ポイント:4回目のゲームで、作品は「生き残りのデスゲーム」から「未来を書き換える物語」へはっきり姿を変えます。エルモアの死を防いだ結果、子どもたちは生き延びました。しかしその歴史でも、祭と影虎は死亡したとされ、イアンは命を落としていました。未来を一つ変えても、別の悲劇は残る。アゲハたちは、未来を知っていることが必ずしも有利ではないという重さを背負うことになります。

現代での追跡|グリゴリと遊坂の裏切り(10〜12巻)

現代に戻ったアゲハは、行方不明の朧の失踪に関わったとマスコミに疑われ、姉のフブキ、雨宮とともにしばらくエルモアの屋敷で暮らすことになります。ウロボロスについて聞くため、アゲハは天文学者の父・夜科朱鳥が主任を務める研究機関「NASL」を訪ねました。

一方、影虎たちは弥勒の手がかりを求めて、弥勒が育った孤児院「はるかぜ学園」を訪れます。そこにいたのは、後のW.I.S.E第二星将ジュナス(グリゴリ実験体05号)でした(集英社11巻紹介文)。影虎とジュナスは激突し、影虎は逃げるジュナスを三日三晩追い回します。同じころ弥勒は、16年前にグリゴリを壊滅させて脱走した実験体01号グラナに戦いを挑みました。敗れたグラナは弥勒を認めてW.I.S.Eに加わり、弥勒は戦いを報じるテレビ中継を通じて、力を隠して暮らす能力者たちに、自分の仲間になるよう呼びかけます。

NASLの研究員・射場公一は、グリゴリの元職員でした。射場は、弥勒が実験体06号として受けてきた非人道的な扱いと、自分が情に流されて弥勒の抑制装置を切ってしまったことで研究所が壊滅した過去を語ります(集英社12巻紹介文)。実験体の脳には、PSIを抑えるチップ「Pacs」が埋め込まれていました。遠隔操作でこのチップを溶かせば、弥勒たちの力を奪えるのです。

アゲハと祭は、自衛隊が管理する元グリゴリの研究所へ潜入します。ところが、射場の友人として協力していた自衛隊の研究員・遊坂葵は、W.I.S.Eの構成員でした。遊坂は射場を毒で殺し、祭と雨宮も戦闘不能に追い込みます。追い詰められたアゲハは新技「暴王の渦(メルゼズ・ボルテクス)」で毒の罠を破り、遊坂に致命傷を与えました。しかし遊坂は最後の力で研究所を爆破し、チップを止める手段は失われてしまいます。

5回目のゲーム|根の襲撃とエルモアの最期(13〜14巻)

新たなメンバーを加えて力を蓄えるW.I.S.Eの行方は、現代ではつかめません。そこでアゲハが提案した「危険な賭け」が、未来の弥勒から現代の弥勒の居場所を聞き出すという案でした(集英社13巻紹介文。案の中身はciatrのネタバレ記事による)。やがて5回目の招集がかかり、アゲハ・雨宮・カブトは再び未来へ向かいます。07号は、4回目のゲームで救われた借りを返すとアゲハたちに伝えました。

今回の未来も、前回とは少しずつ違っていました。根にはより多くの人が暮らし、前の歴史では死んでいたイアンも生きています。しかしネオ天草はジュナスによって壊滅させられていました。そして根は、ジュナス直属の精鋭部隊「スカージ」の襲撃を受けます(集英社14巻紹介文)。アゲハたちとエルモア・ウッドはスカージを撃退しますが、続いて現れたジュナスの圧倒的な力に追い詰められました。

窮地を救ったのは、未来で生きていたアゲハの父・朱鳥です。朱鳥はサイキッカーで、転生の日に500人余りの生存者を救った人物でした。朱鳥はバースト・トランス・ライズを一つに融合させる第4のPSI「ノヴァ」でジュナスと渡り合い、飛龍と辰央も駆けつけます。それでも、マリーを含む多くの住人がW.I.S.Eにさらわれてしまいました。襲撃をきっかけに体調を崩したエルモアは、最後の予知で見た「W.I.S.Eの背後にいる邪悪な意思」を子どもたちに伝え、感謝の言葉を遺して息を引き取ります。

アストラル・ナーヴァ決戦(15〜16巻)

さらわれた仲間を救うため、アゲハたちはW.I.S.Eの首都アストラル・ナーヴァへの攻撃を決めます(集英社15巻紹介文)。アゲハと雨宮は朱鳥の手ほどきでノヴァの修業に挑み、雨宮はもう一人の自分「アビス」と和解して力を手にしました。作戦は飛龍たちとエルモア・ウッドの二手に分かれて始まります。

決戦には思わぬ援軍も加わりました。ゲームをクリアして参加資格を失っていた祭のカードの度数が1だけ戻り、影虎も雨宮側から赤いテレホンカードを受け取って、2人そろって未来へやって来たのです(度数が戻った時期やカードの出どころは、ファンWikiと日本語版Wikipediaで説明が少し異なる)。祭はグラナと、影虎はジュナスと対峙しました。スカージに紛れ込んでいた朧も、アゲハたちに協力します。カイルとフレデリカは星将ウラヌスを倒し、雨宮はアビスと力を合わせてシャイナを倒しました。マリーをさらった星将ヴィーゴは、マリーの体を奪おうとしたミスラを止めようとして殺されます。

ついにアゲハは弥勒と向き合います(集英社16巻紹介文)。07号の幻影が現れて弥勒と言葉を交わしますが、弥勒はその幻影さえ攻撃しようとし、身勝手な言葉を吐きました。激昂したアゲハのノヴァは暴王の月と一体化し、弥勒の体を貫きます。ところが弥勒の体は、すでに生命エネルギーの塊のようなものに変わっていました。

弥勒の本当の狙いは、アストラル・ナーヴァで育てた生命の結晶を使い、古い生命を新しい生命に置き換えて新世界を作ることでした。弥勒がPSI「生命の樹(セフィロト)」の最終段階を発動したそのとき、W.I.S.E元老院のミスラが姿を現します。

真の黒幕ミスラとクァト ネヴァス

ミスラの正体は、ウロボロスの中にいる存在「クァト ネヴァス(星を喰う者)」の意志を伝える代弁者でした。クァト ネヴァスは、人類が生まれるはるか前から星を喰らって生き続けてきた生命体で、喰われた星は新たなウロボロスになります。ミスラは毎晩弥勒に夢を見せて世界への憎しみをあおり、W.I.S.Eを動かしてきたのです。弥勒が集めた膨大な生命エネルギーは、クァト ネヴァスが星の中枢へ達するためのエネルギーとして利用されようとしていました。

ミスラはクァト ネヴァスを地上へ引き寄せ、弥勒の体を上半身だけになるまで分解します。そのミスラを背後から打ち砕いたのはグラナでした。クァト ネヴァスの力で、W.I.S.Eの人間に埋め込まれていた「イルミナ」は力を失い、異形化した禁人種は灰になって消えます。人の形を保っていた辰央らは、皮肉にもこれで人間らしい命を取り戻しました(ファンWikiの整理)。崩れていく未来の世界から、07号は残る力を振り絞り、アゲハたちを現代へ送り出します。

PSYREN サイレンドリフト、W.I.S.E、グリゴリ07号、ミスラ、クァト ネヴァスの関係図
図2:主な人物と勢力の関係(日本語版Wikipedia、ファンWiki、集英社の単行本紹介文から作成)

図2のとおり、物語の表の敵はW.I.S.Eと天戯弥勒ですが、その弥勒自身もミスラに操られていました。上半身だけになった未来の弥勒は、ミスラを打ち砕いたグラナとともに「この星の結末を見に」星の中心へ下り、2人の命と引き換えにクァト ネヴァスを止め、地球の崩壊を防ぎます(ファンWikiは「道連れにした」、日本語版Wikipediaは「地球から追い出して力尽きた」と説明)。アゲハがこの結末を知るのは、最終話で07号から聞かされたときです。

考察ポイント:弥勒は、人間扱いされなかったグリゴリでの日々から人類を憎むようになった人物です。その憎しみさえミスラに育てられたものだったと分かったとき、弥勒は「世界を壊す黒幕」から「利用された実験体」へと立場を変えます。未来の弥勒が最後に選んだのは新世界の王ではなく、星を守るための死でした。15巻までの宿敵が最後に救う側へ回る構図は、W.I.S.Eをただの悪役で終わらせないための仕掛けだと言えます。

現代での最終決戦|約束の涙(16巻)

07号が送り出した先は、5回目のゲームに出発した2008年から1年あまり後の2009年10月25日でした。小説版の公式試し読みにも、07号による変則的なタイムスリップで帰還する期日が丸一年ずれたと書かれています。現代の東京の都心は、W.I.S.Eのテロのような破壊活動で壊滅し、封鎖されていました。

次の焦点は「約束の涙」です。ファンWikiによると、W.I.S.Eのビラに書かれた日付と、北海道の古都霊山(ことだまさん)に隕石が落ちた日付が一致しており、隕石の落下直後には現場から走り去る不審なトラックが目撃されていました。未来の歴史では、この約束の涙を手に入れたときからミスラが本当の力を得ています。アゲハたちは、ミスラより先にこれを押さえようと動きます。

約束の涙をめぐって、アゲハと現代の弥勒は激しくぶつかります。その戦いのなかで、弥勒はアゲハから未来で見た真実を受け取りました。07号の思い、そしてミスラのたくらみです。そこへ、先回りして約束の涙を体に取り込んだミスラが、何食わぬ顔で弥勒のもとへ戻ってきます。すでに正体を知っていた弥勒はミスラを切り裂き、ミスラは本性を現して弥勒に襲いかかりました。その攻撃を止めたのはアゲハです。最後はノヴァを発動したアゲハと弥勒の連携攻撃で、ミスラは約束の涙ごと消滅しました(CALL.141「約束の涙」以降)。

戦いのあと、弥勒は特異な能力を持つ人々の国を作ると語り、W.I.S.Eの仲間とともに表舞台から姿を消します。実際の国づくりの様子は、後述の小説版で描かれています。

PSYREN 結末で未来と現代それぞれに起きた出来事を並べた図
図3:結末の整理|未来と現代で起きたこと(集英社の16巻紹介文と目次、ファンWiki、英語版Wikipediaから作成)

結末|LAST CALL「繋がる世界」

力を使い果たしたアゲハは、決戦のあと意識を失います。眠りのなかで、アゲハは未来の07号の呼びかけを受けました。07号から聞かされたのは、未来の世界で弥勒とグラナが命と引き換えにクァト ネヴァスを止め、地球の崩壊が防がれたという結末です。仲間たちの声に呼び戻されるようにして、アゲハは目を覚ましました。決戦から半年が過ぎていました。

目覚めたアゲハが向かったのは、現代でもまだ囚われている07号のもとです。未来でアゲハたちを何度も助けた彼女を、今度はこちらから迎えに行く。アゲハと雨宮が07号を救い出す場面で、物語は幕を閉じます。サブタイトルの「繋がる世界」は、現代と未来、そして離れた場所にいる人どうしが最後まで繋がっていたことを指していると読めます。

あの崩壊した2018年は、もはや必ず訪れる未来ではありません。日本語版Wikipediaは、世界の滅亡を防いだことで新たな時間軸が生まれたと説明しています。

未来はどう変わったのか|時間軸の整理

PSYRENでは、現代での行動が次に訪れる未来の姿を変えていきます。アゲハたちが目にした未来は、少なくとも4つの姿を取りました(図4)。

PSYREN 現代での行動によってサイレン世界の未来が変わっていった流れの図
図4:未来はどう変わったか(ファンWiki「年表」「サイレン世界における登場人物の生死」、ファンWikiに書き起こされたジャンプ本誌のあらすじ、日本語版Wikipediaから作成)
未来の姿主な特徴変えたきっかけ
最初のDVD宣戦の儀(2009年12月2日)で、覆面の弥勒が子どもたちを殺す―
変化したDVD弥勒は素顔。子どもたちを手にかけるのは主にジュナス。エルモアは2008年7月に事故死犬居事件で子どもたちが山荘で弥勒と出会った(7巻、本誌のあらすじ)
4回目のゲームの未来エルモアと子どもたちは天樹の根で生存。祭・影虎・イアンは死亡したとされる招集直前のアゲハの行動でエルモアの事故死を回避(7巻)
5回目のゲームの未来根に多くの人が暮らし、イアンも生存。W.I.S.Eの襲撃でエルモアが死亡4回目の帰還後の現代での戦い(10〜12巻)
最終回のあと世界の崩壊は回避。新しい時間の流れが始まる現代でミスラを倒した(16巻)

4回目から5回目への変化は、どの出来事が直接の原因かを作中で一つに絞れるものではありません。表の「変えたきっかけ」のうち、7巻の2つはファンWikiが作中の描写から整理したもの、5回目については「その間の現代での出来事」というおおまかな区切りです。

10年後|小説『another call 2』の後日談

アゲハが赤いテレホンカードを手にしてから10年後、作中では2018年ごろの世界は、漫画ではなく小説『PSYREN -サイレン- another call 2 未来は君の手の中に』の表題作で描かれています。2026年10月5日に電子新装版が発売され、JUMP j BOOKSの公式noteで冒頭が試し読みできます。試し読みの範囲では、朱鳥がエルモアを訪ね、ウロボロスが9年前に地球へ向かう軌道から離れ始め、いまでは太陽系からも遠ざかりつつあると報告します。もう一つの用件は、フブキとイアンの結婚でした。エルモアは10年後も健在で、成長したカイルたちはアゲハの帰国を待ちわびています。かつてサイレン世界として見た2018年と同じころに、まったく違う穏やかな日常が描かれるわけです。

刊行当時の読者の感想によると、アゲハと雨宮はサイキッカーの子どもたちを保護するため世界中を巡り、飛龍は教師に、朧は俳優を辞めて仕事を転々とし、カブトは叔父の跡を継いで戦場カメラマンになっています。東雲嵐(ラン)は小児科医になりました。フブキとイアンの結婚式には、ドリフトとエルモア・ウッドの面々が久しぶりに集まります。同じ巻には、W.I.S.Eのその後を描く「陽のあたる場所で」や、ミスラの誕生を描く「星に願いを」も収録されています。

アニメはどこまで描かれるか

TVアニメは、原作の最後まで映像化されることが決まっています。2026年3月28日のAnimeJapan 2026のステージで「2026年10月より放送がスタートし、そこから物語の完結までアニメ化いたします!」と発表されました(ファミ通の報道)。第1話「都市伝説」は2026年10月5日、第2話「禁人種【タヴー】」は10月12日に放送されています。第1話の題は原作CALL.1と同じで、第2話までは原作1巻(1回目のゲーム)の範囲にあたると考えられます。

一方、全何話で何クールになるかは、2026年10月15日時点で公式に発表されていません。公式サイトの主題歌ページは、いまのOPとEDを「第1クール」の楽曲として掲載しており、2クール以上になることはうかがえます。全3クールとする情報も出回っていますが、公式発表ではないため、ここでは扱いません。

まとめ

PSYRENの物語は、次のように整理できます。

  • 赤いテレホンカードで呼ばれる「サイレン」は、10年後の荒廃した日本と現代を行き来させるゲームで、仕掛けたのはグリゴリ実験体07号だった
  • 5回のゲームのあいだに、アゲハたちは現代での行動で未来を書き換え、エルモアと子どもたちの運命を変えていった
  • 世界崩壊の表の元凶はW.I.S.Eと天戯弥勒、真の黒幕はクァト ネヴァスの代弁者ミスラだった
  • 未来では弥勒とグラナが命と引き換えにクァト ネヴァスを止め、現代ではアゲハと弥勒が手を組んで約束の涙ごとミスラを倒した
  • 半年眠ったアゲハは目を覚まし、雨宮とともに07号を迎えに行く。10年後の姿は小説『another call 2』で描かれる

未来を知ることは、それだけでは救いになりませんでした。誰かを救えば別の運命が動き、見てきた未来は役に立たなくなっていきます。それでも未来を見たからこそ、現代で別の道を選べた。全145話は、運命は決まったものではなく切り開けるものだという結論にたどり着く物語でした。