天幕のジャードゥーガルは、13世紀のモンゴル帝国を舞台に、すべてを奪われた少女が「知恵」だけを武器に巨大な帝国の中枢へ食い込んでいく歴史群像劇です。剣も兵も持たない者が、どうやって世界最大の版図を築いた帝国と戦うのか。その答えとして本作が差し出すのは、学問であり、観察であり、言葉です。2026年7月より放送が始まった本作は、アニメーション制作をサイエンスSARUが手がけ、原作の重厚な歴史ドラマを映像として立ち上げています。

草原に張られた天幕(ゲル)の内側で交わされる会話が、そのまま権力の均衡を揺らしていく。派手な戦闘シーンではなく、知性のせめぎ合いそのものを物語の推進力に据えたところに、本作の異質さがあります。ここでは、あらすじ・世界観からスタッフ・キャスト、放送・配信情報、原作の情報までを整理して紹介します。

天幕のジャードゥーガル 作品概要と基本情報

まずは公式に発表されている基本情報を整理します。

項目内容
作品名天幕のジャードゥーガル
英題Jaadugar: A Witch in Mongolia
放送開始2026年7月4日(土)/テレビ朝日系「IMAnimation」枠
話数放送スケジュール上は全12話とみられる(公式の総話数発表は未確認)
原作トマトスープ(秋田書店「Souffle」連載)
アニメーション制作サイエンスSARU
総監督山田尚子
監督Abel Gongora
シリーズ構成加藤還一
キャラクターデザイン・作画チーフ吉田健一
音楽日野浩志郎
オープニング主題歌「Stella」/SEKAI NO OWARI
エンディング主題歌「星」/女王蜂

タイトルにある「ジャードゥーガル」は、公式の英題が「Jaadugar: A Witch in Mongolia」とされていることからもわかるとおり、魔術師・魔女を意味する言葉です。主人公が超常の力を振るう物語ではありませんが、知識を持つ者がそう呼ばれることの意味は、作品を追ううえで一つの鍵になります。

サイエンスSARUが制作を担い、総監督に山田尚子、監督にAbel Gongoraを迎えた布陣は、今期のアニメの中でも注目度の高い組み合わせです。歴史ものという題材に対して、どのような映像表現が選ばれるのかが本作の見どころの一つになっています。

世界観とあらすじ:奪われた少女が名を変えるまで

舞台は13世紀。ユーラシア大陸を東から西へと呑み込みながら拡大を続けるモンゴル帝国の時代です。物語の主人公は、母と故郷を失った少女シタラ。身寄りをなくした彼女は、学者の一家に引き取られます。

そこで彼女を実の娘のように慈しんだのが、家の女主人であるファーティマでした。そしてファーティマの息子ムハンマドは、幼いシタラに「学ぶこと」の意味を教えます。文字を読み、数を数え、世界の仕組みを知る。それは奴隷として生きてきた少女にとって、初めて手に入れた自分だけの財産でした。

しかし、その穏やかな日々もモンゴル帝国の侵攻によって断ち切られます。シタラは再びすべてを奪われ、捕虜として帝国へと連れ去られました。

ここからが本作の本題です。シタラは、恩人の名である「ファーティマ」を名乗り、身につけた知識を価値として帝国の王族へ売り込んでいきます。武力では到底かなわない相手を、内側から崩す。そのために彼女が選んだのは、後宮という舞台でした。

やがてシタラは、同じく帝国に対して強い感情を抱く一人の女性と出会います。皇子オゴタイの第六妃、ドレゲネです。表向きは従順に振る舞いながら、心の底に憎しみを隠し続けてきた妃と、知恵を武器に復讐を志す少女。立場も背景もまるで違う二人が手を組んだとき、帝国の権力構造は静かに軋み始めます。

この記事のあらすじ紹介は、公式サイトのイントロダクションおよび物語序盤の範囲にとどめています。以降の展開については触れていませんが、原作既刊分の内容に関わる固有名詞が一部含まれるため、完全に前情報なしで観たい方はご注意ください。

制作陣:サイエンスSARUが挑む歴史群像劇

本作でアニメーション制作を担当するのはサイエンスSARU。総監督に山田尚子、監督にAbel Gongoraを迎えた体制です。シリーズ構成は加藤還一、キャラクターデザイン・作画チーフは吉田健一が務めています。

音楽を手がけるのは日野浩志郎。主題歌は、オープニングがSEKAI NO OWARIの「Stella」、エンディングが女王蜂の「星」という組み合わせです。歴史劇という題材に対して、いずれも意外性のある人選であり、その意外性がそのまま作品の色になっています。

13世紀のユーラシアという舞台は、衣装・建築・生活様式のすべてを一から設計しなければならない題材です。天幕の内装、後宮の装いと所作、書物や道具のディテールまで、絵として説得力を持たせることが作品の説得力に直結します。本作はそこに真正面から取り組んでいます。

キャスト一覧:豪華声優陣が並ぶ帝国の人々

公式サイトで発表されている主なキャストは以下の通りです。

キャラクター担当声優
シタラ(ファーティマ)関根明良
ドレゲネ小清水亜美
ファーティマ桑島法子
ムハンマド齋藤 潤
シラ入野自由
ジュチ野島健児
チャガタイ浪川大輔
オゴタイ下野紘
トルイ鈴木崚汰
ソルコクタニ久野美咲
ボラクチンくじら
モゲ朝井彩加
キルギスタニ新谷真弓
グユク花江夏樹
ダイル石田彰
クラン水瀬いのり
クルトガン千葉翔也
ズムッルドニケライ ファラナーゼ
アニース伊瀬茉莉也
チンカイ上田燿司
クビライ石橋陽彩
フレグ村瀬歩

皇子たちに下野紘、浪川大輔、野島健児、鈴木崚汰という顔ぶれを並べ、後宮側に小清水亜美、桑島法子、久野美咲、くじらを配置する。ベテランと若手が明確な役割分担で配されており、キャスティングの段階から「政治の物語」であることが伝わってきます。

主要キャラクター紹介

シタラ(ファーティマ)/CV:関根明良

本作の主人公。母と故郷を失った少女で、学者の一家に引き取られて知恵を身につけますが、モンゴル帝国の侵攻によって再びすべてを奪われます。捕虜となった後は恩人の名「ファーティマ」を名乗り、学んだ知識を価値として王族へ接近していきます。

ドレゲネ/CV:小清水亜美

皇子オゴタイの第六妃。帝国と夫に対する強い憎しみを隠して後宮に身を置いており、シタラとの出会いをきっかけに共闘を決意します。物語のもう一人の主役といえる存在です。

ファーティマ/CV:桑島法子

ムハンマドの母であり、身寄りを失ったシタラを引き取った女性。実の娘のように慈しんで育てた、心優しい人物です。主人公が後に名乗ることになる名前の持ち主でもあります。

ムハンマド/CV:齋藤 潤

ファーティマの息子で、聡明な青年。幼いシタラに「学ぶことの意味」を教えた人物であり、自身も知恵と真理を求めて旅へ出ます。主人公の人生を決定的に変えた恩人です。

シラ/CV:入野自由

モンゴル帝国の捕虜となった少年。生き延びること、そして身を立てることを目指し、皇子トルイに巧みに取り入ろうとします。シタラとは異なる方法で帝国の内側を目指す存在です。

オゴタイ/CV:下野紘

第三皇子。思慮深く穏やかで寛大な人物として描かれ、帝国の繁栄を優先する達観した為政者です。ドレゲネの夫にあたります。

ジュチ/CV:野島健児、チャガタイ/CV:浪川大輔、トルイ/CV:鈴木崚汰

第一皇子ジュチは四兄弟の長男で、控えめでおとなしい性格。第二皇子チャガタイは法と規律を重んじる厳格な人物ですが、弱者を守ろうとする一面も持ちます。第四皇子トルイは帝国の軍事力を担う立場です。四人の兄弟がそれぞれ異なる原理で動くことが、帝国内部の緊張を生んでいます。

ソルコクタニ/CV:久野美咲

トルイの正妃。西方の知識である『原論』を求める聡明な女性で、帝国内の軍事力と権威のねじれを見抜く洞察力を持ちます。原作第1巻では、シタラが西方の知識を伝える役割を得る相手として描かれています。

ボラクチン/CV:くじら

オゴタイの第一皇后であり、大カトゥン。冷静で威厳があり、帝国の未来を見据えて水面下で策略を巡らせる人物です。

ダイル/CV:石田彰、クラン/CV:水瀬いのり、クルトガン/CV:千葉翔也

メルキト族に連なる人々です。ダイルは族長の一人で、精霊と対話する巫者。若きドレゲネを妻として迎えた人物でもあります。その娘であるクランは明るい性格で、仲間を守るために自ら盾になろうとする少女。クルトガンは弓の名手で、クランやドレゲネと親しく、モンゴルに抵抗する道を選びます。ドレゲネが帝国に対して抱く感情の背景には、この人々との関わりがあります。

後宮の妃たち:モゲ/CV:朝井彩加、キルギスタニ/CV:新谷真弓

モゲはオゴタイの第四妃で、第一皇后ボラクチンを深く慕う無邪気で素直な人物。キルギスタニはオゴタイの第三妃で、感情表現が激しく、他の妃たちへの強い対抗心を持っています。後宮に集められた女性たちが決して一枚岩ではなく、それぞれの思惑と感情で動いていることが、物語の複雑さを生み出しています。

グユク/CV:花江夏樹

オゴタイとドレゲネの息子。気分に波があり、見知らぬ人を怖がる繊細な性格として描かれています。母であるドレゲネの立場を考えるうえで、欠かせない存在です。

屋敷と帝国に仕える人々

シタラの周囲には、彼女の人生に関わる人々が配されています。ズムッルド(CV:ニケライ ファラナーゼ)はトゥースの屋敷に長く仕える女性で、シタラに仕事を教える立場。アニース(CV:伊瀬茉莉也)は掃除の上手な女中で、シタラにとって姉のような存在です。ファーティマの兄にあたる伯父(CV:最上嗣生)は教師の資格を持ち、子どもたちにクルアーンの読誦を教えています。

帝国側では、ウイグル人の元行商人チンカイ(CV:上田燿司)が帝国に仕える人物として登場。またトルイとソルコクタニの子であるクビライ(CV:石橋陽彩)とフレグ(CV:村瀬歩)も名を連ねており、次の世代までを視野に入れた人物配置がなされています。

作品のテーマ:知恵は武器になるか

本作の中心にあるのは、「力を持たない者が、いかにして巨大な権力に抗うか」という問いです。主人公は兵を率いることも剣を振るうこともできません。持っているのは、失われた日々の中で誰かから与えられた知識だけです。

原作の紹介では、後宮という舞台において「賢さこそが美しさ」であるという言葉が掲げられています。容姿でも家柄でもなく、知性が女性の価値を決める場所。それは一見すると希望のようでいて、同時に、知性以外の生き方を許さない過酷な環境でもあります。

興味深いのは、シタラに知識を与えたのが、彼女が復讐を誓う相手ではなく、彼女を愛した人々だという点です。奪われたものへの怒りを燃やす燃料が、愛されて手に入れた贈り物である。この矛盾が、主人公の行動を単純な復讐譚から遠ざけています。

また本作は、征服する側と征服される側の双方に視点を置いています。モンゴル帝国の皇子たちは記号的な悪役としてではなく、それぞれの信念と葛藤を持つ人物として描かれ、後宮の妃たちもまた、それぞれの立場で生き延びようとしています。誰かを一方的に断罪しない構造が、物語に厚みを与えています。

見どころ:ここに注目したい

本作を追ううえで、特に注目したいポイントを整理します。

会話が戦闘になる緊張感

後宮を舞台にした場面では、一言の選び方、視線の置き方、沈黙のタイミングが、そのまま勝敗を分けます。剣戟のない場面にこそ最も張り詰めた空気が流れるという構成は、本作ならではの快感です。

サイエンスSARUによる映像設計

草原、天幕、書物、装身具。13世紀のユーラシアという舞台をどう画面に定着させるかは、この題材のアニメ化における最大の課題です。歴史ものが苦手な方でも、画面そのものの情報量を楽しめる作りになっています。

SEKAI NO OWARIと女王蜂の主題歌

歴史劇という題材に対し、オープニングにSEKAI NO OWARIの「Stella」、エンディングに女王蜂の「星」を配した構成も本作の個性です。物語の重さと音楽の質感の組み合わせは、毎話の視聴体験を強く印象づけます。

登場人物には、モンゴル帝国史に名を残す人物と同じ名前を持つキャラクターが複数登場します。ただし本作はあくまでフィクションであり、作中の人物像や出来事を史実そのものとして受け取らず、一つの物語として楽しむのが適切です。

放送・配信情報

テレビ放送は以下のスケジュールで行われています。

放送局放送日時
テレビ朝日系全国24局ネット毎週土曜 23:30〜 ※初回は2026年7月4日(土)23:00〜の2話連続放送
ABCテレビ毎週日曜 0:00〜
BS朝日毎週土曜 深夜1:00〜(日曜未明) ※初回は7月4日(土)深夜1:00〜の2話連続放送
テレ朝チャンネル1毎週日曜 22:00〜
アニマックス毎週土曜 21:00〜

放送枠はテレビ朝日系全国24局ネットの「IMAnimation」枠で、2026年7月4日(土)にスタートしました。公式サイトのON AIR情報によれば、初回のみ23:00から2話連続で放送され、以降の通常放送は毎週土曜23:30〜となっています。BS朝日でも初回は7月4日(土)深夜1:00から2話連続で放送されました。局によって放送日時が異なるため、視聴の際はお住まいの地域の編成を確認してください。

配信サービス

配信は複数のプラットフォームで行われています。主な配信先は次の通りです。

  • 無料視聴が可能なサービス:ABEMA、ニコニコ動画、TVer
  • 有料配信サービス:dアニメストア、U-NEXT、Netflix、Prime Video、Hulu、DMM TV、FOD、Lemino、バンダイチャンネル、アニメ放題、TELASA、milplus

公式サイトのON AIR情報で見放題プランの対象として明記されているのは、dアニメストア(dアニメストア for Prime Video、dアニメストア ニコニコ支店を含む)、TELASA(見放題プラン)、milplus(見放題パックプライム)です。それ以外はサービス名のみの掲載のため、視聴方法が見放題か都度課金かは各サービスの案内を確認してください。

各サービスの配信開始タイミング、無料対象話数、配信期限は変更される場合があります。TVerなどの見逃し配信は公開期限が設定されているため、視聴前に各サービスの最新情報を確認することをおすすめします。

原作情報:秋田書店「Souffle」連載の歴史漫画

原作はトマトスープによる同名漫画で、秋田書店のWebマンガ誌「Souffle(スーフル)」で連載中です。2026年8月時点で本編の単行本は6巻まで刊行されています。

物語は、故郷を奪われた少女が知識を武器として帝国の内側へ入り込んでいく過程を、13世紀ユーラシアの生活や思想とともに描いていきます。なお、本編とは別に副読本『もっと!天幕のジャードゥーガル』も刊行されています。

アニメは2026年7月に放送が始まったばかりで、原作は連載が継続中です。アニメで興味を持った方が原作へ進むうえでも、ちょうどよいタイミングといえます。

まとめ

『天幕のジャードゥーガル』の要点を整理します。

  • 作品概要: 13世紀のモンゴル帝国を舞台に、すべてを奪われた少女シタラが「知恵」を武器に帝国の内側へ食い込んでいく歴史群像劇
  • 制作体制: アニメーション制作はサイエンスSARU、総監督は山田尚子、監督はAbel Gongora、シリーズ構成は加藤還一、キャラクターデザイン・作画チーフは吉田健一、音楽は日野浩志郎
  • キャスト: シタラ役に関根明良、ドレゲネ役に小清水亜美、ファーティマ役に桑島法子。皇子たちには下野紘、浪川大輔、野島健児、鈴木崚汰らが名を連ねる
  • 主題歌: オープニングはSEKAI NO OWARI「Stella」、エンディングは女王蜂「星」
  • 放送: 2026年7月4日(土)にテレビ朝日系「IMAnimation」枠でスタート(初回は23:00〜の2話連続放送、以降は毎週土曜23:30〜)。ABCテレビ、BS朝日、テレ朝チャンネル1、アニマックスなどで放送
  • 配信: dアニメストア、Netflix、Prime Video、U-NEXT、Huluなどの有料配信サービスに加え、ABEMA、ニコニコ動画、TVerでも視聴可能
  • 原作: トマトスープによる漫画。秋田書店「Souffle」連載中で、単行本は6巻まで刊行

戦の描写ではなく、会話と観察と知識のやり取りで緊張を生み出す。歴史ものでありながら、その面白さは極めて現代的です。奪われた者が何を武器に立ち上がるのかという問いに、本作は静かで、しかし確かな答えを示そうとしています。放送はまだ続いています。今から追いかけても遅くはありません。