「あの仕事まだ終わってないのか!」
 と、上司は怒った。
 「すみません」
 ぼくは謝った。
 「謝ればいいってもんじゃないからな、早く仕上げろ」
 頭を下げているぼくに機嫌をよくした上司は続けて、「エクセルの入力なんて、手でやらなくても自動化する方法がいくらでもあるだろう」
 と、自慢げに自分の得意なVBAの指南をしてくれた。
 ぼくはメモを取りながら真剣に相槌を打った。
 真剣に、真面目に、メモをとった。
 「わかったようだな。要は仕事には「愛」が大事なんだよ、「アイ」が!」
 ぼくの話を聞く態度に満足してか、最終的には、上司は怒るどころか、笑顔でさって行った。
 「期待してるぞ!」
 「ありがとうございました」
 ぼくは笑顔で答えた。
 人工知能が自動生成してくれた、上司対応マニュアル通りに。
 上司の機嫌をみる限り、上司のいうことは正しいようだ。
確かに、仕事にはAIが大事らしい。
みたいな話が現実的になってきているってお話です。
顧客情報流出があったときに、謝罪文を自動生成してくれるサイト
Why the fuck was I breached?
 https://whythefuckwasibreached.com
日本のセキュリティベンダーといえば、トレンドマイクロ社ですが、そのトレンドマイクロ社ですら12万件の顧客情報漏洩しました。
・トレンドマイクロから最大12万件の顧客データ流出 元従業員が不正に持ち出し
 https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1911/06/news109.html
どこから、いつ、情報が漏れるのかわからないですよね、まったく。
 守ってくれるはずの会社からの漏洩なわけですから、どんなに意識して防御しても、完璧ということはありえないんです。
まずったとき。
どうします?
どうしても言い訳を考えてしまうのがサガじゃないかと思います。
 でも、言い訳を考えるのは以外にしんどい。
言い訳して良いわけ? って状態だと特にです。
事実を調べるのは大変。
 嘘を考えるのも良心が痛む。
どちらにしても体力を消費しますよね。
 体力を消費すると、心も消費する。良いことなんて何もないです。
 ただでさえ、情報漏洩したところなら、なおさらです。
そこで、言い訳なんてものは考える必要ありません。
 ぜんぶ、システムに任せてしまいましょう!
「Why the fuck was I breached?」
 を使うと、言い訳を自動的に作成してくれます。
 こんな風に!
やったね、これで仕事も楽になる!
 働き方改革だぜ!

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 ジョークサイトかよ!
信じた人は、見る目(EYE)がないね。
 やっぱりアイが大事なんだ。
了











