意味が分かると怖い話

【解説】意味が分かると怖い話「注文が多い餃子屋」

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動画

意味こわ「注文の多い餃子屋」

知る人ぞ知る餃子店に並んでいると
「めんどうくさいから帰ってくれ!」
と、怒声。
店主が客に怒鳴ったようだ。
それに気分を害したその客は、
イライラした様子でスマホをいじりながら帰っていった。
(書き込みでもしているのだろうか)
目の前で繰り広げられたバトルに竦み
ぼくは、おとなしくルールに従うことにした。

餃子屋には入店時のルールがあった。
マスクを着用すること!
それは絶対ルールだった。
追い返された客もマスクをしていたようだが、
ルールについてくわしく確認したところ
「めんどくさい」
と一蹴されてしまったようだ。

契約書にはかんたんにハンコを押してはいけないよ
父親にぼくもいわれてはいたけれど、
餃子を食べるためのルールくらいなら
そんなに詳細を確認する必要もないのではないだろうか。
ということで、ぼくはまず、マスクをして入店した。
「美味しく召し上がっていただくためにはルールを守ってもらわないと」
店主はとても満足そうだった。

ぼくは席についたので、マスクをはずそうとした。
すると店主は「マスクをしないならでていけ!」と言う。
なるほど。
ルールには従おう。
ぼくは料理が出てくるまで、おとなしくマスクをして待った。
餃子、餃子、餃子。
一度食べたら忘れられない餃子と評判の餃子。
ぼくはマスクの中をよだれでいっぱいにしながらまった。
そんなぼくの前にまず水が置かれた。
水を飲もうとマスクをはずそうとしたところ
「マスクをしないならでていけ!」
と怒られた。

むむむ
マスクをしたままどうやって飲んだらいいのだろうか。
どこまで本気でどこまで冗談だかわからない。
まさか餃子もマスクしたまま食べろなんていわれないよね?
ぼくは不安になってきた。
周りの様子を確認したいけれど、全席個室なので
周りの客がどうしているのかわからない。
あるいはドッキリカメラかもしれない。
カメラを探すけれど、カメラはない。

いよいよ、餃子が運ばれてきた。
待った甲斐があった!
とてもいい匂いだ。
マスク越しにでも1嗅ぎすれば、おいしいものだとわかる。
ぼくは我慢できず、マスクをとって
餃子をほうばりたい欲求に駆られるが我慢した。
店主の表情を伺うと、満足げに笑っていた。

しかし、このままではマスクが邪魔で餃子が食べられない。
困っていると、
スマホにメッセージが届いた。
店主からのメッセージだった。
マスクをはずして、餃子を食べたい場合は
餃子を持ち、フェイスシールドをした上、案内にしたがい
部屋を移動せよ
とのことだった。

食べずに帰ることなんて、ここまできたらありえない。
ぼくはルールにしたがった。

暗い通路を通り抜ける。
通路の中は、ほんのりと餃子と同じ香辛料の香りがした。
マスクをしてなければ、胡椒にむせてしまうかもしれない。
フェイスシールドがなければ、目に染みるかもしれない。
ルールに従い、暗い通路を進む。
盲目的に。

奥に行けばいくほど、ニオイは強くなった。
調理場にでも案内されるのかもしれない。
焼き立ての餃子を食べることができる。
ぼくのテンションはうなぎのぼりだった。

部屋を抜けると、暗い部屋があった。
言われるがままにぼくは席についた。
そこでやっと、マスクをはずす許可が降りた。

マスクをはずすと、餃子と同じニオイの粉末が
天井からどばっと落とされ、ぼくはそれにまみれた。

店主の声がする。
「どうぞ、おいしく召し上がってください」

なんでぼくはルールをちゃんと確認しなかったのだろうか。
後悔してももう遅い。
恐ろしい声が響く。
美味しく召し上がるのは、ぼくではないことは明らかだった。

意味こわ解説

最近某餃子店のニュースからインスピレーションを得て書いた物語です。
もちろん、宮沢賢治のオマージュでもあります。

店のルールを守ること。
それは当たり前です。

野球をするなら野球のルール。
サッカーをするならサッカーのルール。
ボクシングをするならボクシングのルール。

それぞれ従う必要があります。

しかし、正しく従うためにも
ルールの内容の確認は基本的にはしたほうがいいと、個人的には考えます。

餃子を食べるためのルールくらいなら
そんなに詳細を確認する必要もないのではないだろうか。
ということで、ぼくはまず、マスクをして入店した。

「それくらい「常識」で判断すればいいじゃねーか」

という声も聞こえて来そうですが、
昔の偉い人も言いましたが
常識とは偏見のコレクションです。

なので、自分の常識を常識と思い、
確認もせずに、盲目的に従うことは
危険な場所を目隠しで歩くのと同じ。

ルールに従い、暗い通路を進む。
盲目的に。

事実、感染症予防に有効であるフェイスシールドとマスク。
このふたつは常識で考えれば
お客様を守るために、店がルール化しているものだと考えられます。

しかし、それも主人公の「常識」であり、店長の「常識」ではなかったわけです。

注文の多い餃子店は、客に、これから自身に起こることを悟らせないため
フェイスシールドと、マスクを着用させているのでした。

・・・というように、

いつ、どんな不都合に襲われるかもわかりませんよ、というお話でした。

みなさんが主人公をおいしくいただいてくれたことを祈るばかりです。

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